一般的に税理士事務所の職員の給与は、上場企業と比較すると、当然かなり低い。
中小零細企業の高付加価値の企業に比較しても、かなり安い。
一般的な中小企業と比べると、まあまあかなといったレベルに落ち着く。
年功序列型の賃金体系を採用している事務所において、コスト計算すると、どうだろう。
営業を主力にする企業にとって、社員は自分の給与の3倍は売り上げろと言われる。
これで、まずは採算は取れる。会社全体としては、給与の3倍以上の売り上げをする職員がいるのが条件。
ところで、税理士事務所の職場を見ると、担当する顧問先の売り上げが、給与の3倍を超えている例は?
若い職員ほどこの数字をクリアしているのだが、高齢の職員ではこの数値を超えている例は?
税理士事務所の場合、長年担当している顧問先からの売り上げが上がるということはまずない。
同じ顧問料を長年続けながら、担当の職員の給与は上げなければならない。
日本企業ならではの給与体系を続ける経営者にとって、歴史を積むほど給与のウエートが上がる。
所長と共に働いてきた職員の給与はそれなりに上がっているのだが、事業承継になるとこれが問題。
仕事の内容だけで考えると、顧問料収入の3倍を稼げない職員の給与は上げられない。
事業承継する税理士としては、同じ稼ぎをする職員であれば、同じ給与を支給したいところ。
しかし、譲り受ける職員の給与が、自分の事務所の職員と大きな開きがあれば、躊躇する。
給与が高すぎますと大声を出せば、引き渡す先生は、「それでは辞めましょう」という可能性もある。
だからと言って、今のまま高い給与でいいですよとは、なかなか言いにくい。
そこでどうするかと言えば、引き渡す先生から譲り渡す事務所の実情を職員に説明するしかない。
同時に、引き受ける先生から、引き継がれる職員に十分納得できる”挨拶”が必要。
「辞めさせたくない」「辞めたくない」「お客さんに面倒をかけたくない」、これで話はまとまります。
税理士事務所の職員の給与は高くありません。むしろ、安い。
これは、税理士試験に挑戦する若者たちがいたから、いわば徒弟制度の延長の話。
でも、最近は違いますよ。そんな考えで、安い給与で上手くやろうなんていけません。
事業承継支援室長
大滝二三男