三代続いた税理士事務所の話です。
初代は戦前の計理士から税理士になり、その子は税務職員から税理士に。
三代目が登録税理士で、業務は勤務税理士が担当。
二代目の時に温厚な人柄と面倒見の良さで、お客は口コミで増えて行った。
従業員の数も増え、勤務税理士を雇うようにもなっていた。
各従業員が一人当たり30件のお客さんを担当し、その数も10数人にまで成長。
そんな中で、番頭さん的な役割をこなす、所長と歳も大して違いのない従業員が業務を統括。
先生もこの番頭さんに全幅の信頼を置き、専ら税理士会や対外的な業務をこなしていた。
しかし、先生にも糖尿病という持病があり、年々病状も悪化していった。
いよいよ先生が経営を見ることができなくなた時に登場したのが、長男である登録税理士。
番頭さんが事務所を差配していることに我慢がならず、事あるごとに番頭さんに当たり散らす。
番頭さんとしては長年の習慣で、任された仕事をこなしているだけで、あくまでも所長の代理。
ところが、ある時所長の息子と大激論。無理なことを主張する”息子”に愛想を尽かし、辞職。
持病が悪化し、入院していた所長は寝耳に水。まさか、番頭を辞めさせるとは、と怒っては見たが。
もう口をはさめるような状況ではなくなっていたし、その気力もない。
番頭の辞職劇があり、その後まもなく、二代目もこの世を去った。
事務所を引き継いだ新所長は、何を思ったのか、長年住み慣れた地域から事務所を移転。
地域の住民、お客さんのことは放っておいて、自分の好みの場所に事務所を借りてしまった。
ほとんどの顧問先がいる地域には交通機関を利用すると、2時間近くかかるその事務所。
従業員はこれまでは徒歩で行かれたお客さんの所も、電車等で行く始末。
一人当たり30件以上も担当しているため、労働強化も甚だしい状況になってしまった。
これが影響して、次々と職員は離職。ベテランほどその傾向が強くなった。
勤務税理士もいなくなる状況になり、実務ができる職員もほとんどいなくなった。
こうなるとお客さんも仕事を依頼できないと、契約を破棄し、ほかの事務所に移って行った。
顧問先hが減れば収入も減る。そのため職員の給与を下げることでやりくりをする始末。
仕事ができない税理士は、勤務税理士が辞めるたびに新たに募集。
現在もほとんど会計業務の経験のない勤務税理士が、四苦八苦で業務を行っている。
良いずれこのj所長が目を覚まさない限り、この事務所はなくなっていくはず。
三代続いた事務所経営も、中小企業と同様の末路を進んでいくようだ。
事業承継支援室長
大滝二三男