先日、名義貸しをしていたという事務所に勤務していた税理士に会いました。
所長はここ10数年実はほとんどタッチせず、税務調査も勤務税理士任せ。
事実、勤務税理士が税務調査の立会を任されることも、しばしば。
会ったこともないお客さんと税務署の調査官との間に立って、調査を見守る。
会計業務を一切行っていないのだから、あいまいな相槌を打つのが精一杯。
ヤバイ話にならないかと、冷や汗の出ることも少なくなかったという。
実務では、名義借りをしている事務所から税務申告書が届き、別表などを打ち直す。
その申告書に所長税理士が判を押し、申告書を税務署に送付して、一件落着。
所長税理士が名義を貸しているのは、所長が一人で担当していれば分からないことだった。
しかし、最後の別表の作成(これがあるから名義貸しにならないと主張)は職員に任せる。
これで、職員は名義貸しをしている事実を知り、さらに税務調査の立会となれば、明明白白。
このような名義貸しに対する税務当局の追及は、昨今非常に厳しさを増している。
先般も東京税理士会の会報に、所長税理士と補助税理士の処分(数か月の業務停止)があった。
本当にどこにでもある話だが、今回はその名義貸しの現場にいた税理士の悲痛な叫びだった。
今ケースでは勤務税理士が退職した際に、名義貸しの”契約”を破棄したという。
所長だけでは別表作成などの実務がこなせなくなったのが、その背景にあるようだ。
しかし、責任を逃れるために、最終的な申告書の一部だけに手を加えるだけの、小手先のごまかし。
実態はなかなかつかめないようだが、このような悪質な行為は厳しく取り締まってもらいたいものだ。
事業承継支援室長
大滝二三男