名義貸しをしていた先生は試験組。名義を借りていた事務所は、国税のOBの家族。
その仲介をしたのが、元税務署長上がりの税理士。
この元税務署長、体調を崩し、今回”告発”された税理士に、「名義を貸すだけだから心配なし」と説明。
もともとは、この元税務署長の先輩の事務所家族を手助けするために、判子を押していた。
自分が税理士を辞める際に、今回税務署の調査を受けた試験組税理士にバトンタッチした。
人が良いのか、それとも元税務署長に恩義があったのか、年間数百万円の名義借り事務所をバックアップ。
人知れず、数年間名義貸しを続けていたところ、税務署の調査が入り、全貌が明らかになった。
税務署の調査をすべて認め、税理士資格を返上することになった。
とはいうものの、職員の今後のことを考えると、ただ単に事務所を閉鎖するわけにもいかない。
そこで、当支援室の相談が来たわけだが、当支援室としては、事務所を承継する方策を考える。
先生が税理士資格を返上してしまえば、お客さんは草刈り場になってします。
誰が営業しようが、ご家族も何も権利を主張できない。当然のことだ。
同時に、その情報を聞きつけた他の税理士が営業をかけることも辞めさせることはできない。
こうなると早く事業承継をし、職員の雇用を確保し、先生への承継の対価を確保するのが必定。
人助けとして、軽く考えて名義を貸したことは、どんな理由であれ、許されることではない。
一般的な風潮として、税務署OBが大丈夫と言っていたので、それを信じてしまいがちだ。
過去にも、税務署長OBが絡んだ事務所の乗っ取り話をよく耳にもし、現実に対応もした。
でも、今は元税務署長の税理士が、税務署に対して顔を利かせて、何でもできるという時代ではない。
3年前から税務署退職時に顧問先を斡旋することも、できなくなっている。
それだけ税務署OBだからといって、現役の税務職員がその言い分をすべて受け入れることはない。
いや、むしろ名義貸しなどに対する処分は厳しくなっているのが現実だ。
法律家である税理士が、法律違反をして許されるわけがない。
OBがどうだこうだというのも、今は昔。
古い時代を生きてきた人たちが間違いを起こす可能性だけは、今も生きているのではないだろうか。
事業承継支援室長
大滝二三男