個人の税理士事務所の所長が死亡すると、その時点で顧問先との契約はなくなる。
とはいっても、税理士法人の場合は、組織は社員税理士が一名不足する事態に。
そこで、社員税理士を新たに1名加入させれば、税理士法人は成立する。
時間的な猶予もあるので、代表社員が死亡して、社員税理士が1名になっても、即解散ではない。
個人事務所から税理士法人になる。しかも、勤務税理士を社員税理士とする場合ももちろんある。
この場合、代表社員は個人事務所と同じように、税理士法人も「私のもの」と考えがち。
同時にその代表社員の家族も、「お父さんの事務所!」という思いを捨て切れない。
出資金は同じ社員税理士でも、代表社員は株式会社同様、圧倒的な出資をしている。
代表社員が死亡すれば、税理士法人に蓄えられていた利益剰余金は、死亡退職金として遺族に入る。
ここまでは皆さん納得するだろう。しかし、税理士法人の一社員税理士が独立するとなるとどうだろう。
当然、社員税理士である期間中に、お客に対して「独立すること」を言っていれば、税理士法違反。
明らかに競業避止の規定に抵触するから、損害賠償の対象にもなる。
ところが、独立する際に代表社員の遺族に対して、将来的に遺族の面倒を見ると言った場合、どうだろう。
当然、遺族には税理士がいないこともあって、代表社員の持ち分に応じた承継の対価を要求する。
これば果たして、法律的に正当なのだろうか。
税理士法人の重要事項決定に関しては、社員税理士の一人一票で、判断される。
ところが、社員税理士の一人が死亡した時に、果たしてその遺族が権利を主張できるのか。
社員税理士としての持ち分がある以上、死亡時点でその遺族がその持ち分に応じた権利を主張できる。
そう考えることもできる。
そこで問題が。個人事務所の場合は、一身専属ということで、契約そのものが死亡とともに無くなる。
こうなると、勤務税理士がその顧客を引き継いでも、法律的には承継の対価は発生しない。
遺族が権利を主張する機会はその時点で、なくなってしまう。もちろん、承継者には道義的責任はある。
その責任に目を向けることなく、しらばっくれれば、それは法律に違反する行為ではない。
でも、税理士法人であれば、当然そのお客を持っていた税理士には対価を支払う義務はある。
将来このような問題が起きることは当然考えられるので、税理士会にもその判断を用意することを願う。
とにかく、勤務税理士が独立する際には、お金は払わず、顧客を持っていくのが当然と考える輩も多い。
勤務税理士からパートトナーになる際には、この当たりの取り決めをしっかりしておくべきでしょうね。
事業承継支援室長
大滝二三男