良くある話です。所長が亡くなり、その直後は勤務税理士も日常業務にまい進。
しかし、所長の遺族から、事務所を引き継ぐについては、なにがしかの金銭をと要求される。
勤務税理士は当然、自分が事務所を引き継ぐものと思って入るものの、お金を払うことには躊躇。
時には安い月給で長く務めたのだから、ただで事務所を引き継ぐことができるものとの考えも。
さらに、所長が死んだと同時に顧問先との契約は解消され、誰が契約しても良い状態に。
そのことを知ってか知らずか、自分で事務所を開設し、先生の顧問先を引き継ぐことも出てくる。
その際通常は、遺族の了解のもと、お金を支払う約束をして引き継ぐのが普通だが、そうでないことも。
今回のご相談もそんな例。
一部の顧問先を引き継いだ税理士が、話し合いの場に出て来ないというのです。
当支援室ではこのような事例では、弁護士にご相談くださいとしかお答えできない。
弁護士と同じ仕事は資格上不可能なので、そう答えるのだが、それ以前になぜそのような事態になったのか。
お互いが口約束で顧問先の移動などを了解したのではないだろうか。
それを文書化することなく、しかも弁護士などの仲介者を間に立てて、話を進めなかったのだろう。
いわば性善説に立って、「払ってくれるに違いない」と思い違いをしていたのではないだろうか?
長い間勤務していたのだから、そんなに手のひらを返すようにことをするはずがない、と。
でも、違います。お金は払いたくないのです。せっかく自分のものになったし、顧問先もついてきてくれた。
資格のない遺族が税理士事務所を経営できるわけではないのだから、自分は正当だと主張(?)
いずれにしても、最初の段階でしっかりと話を付け、文書にして取り交わしていないのは致命的。
多分このケースでは、データなどもすべて抜き取ったうえで業務を開始しているはず。
そんなことも阻止できなくて、お客さんを持っていかれた、どうしましょうかと言われても、後の祭り。
そうです。勤務税理士がいる場合には、所長が元気なうちに後継者対策もしっかりしておかないといけません。
このように遺族にもめ事を残してしまうのは、最悪です。いかに生前はいい先生でも、遺されたものは恨みます。
事業承継支援室長
大滝二三男