事業承継によって、時期はともかく、税理士さんの引退の道は出来上がります。
弊社が仲介する案件では、ほとんどの場合、職員はそのまま雇用します。
引退する先生も職員の雇用が、一番の懸念材料ですです。
事業承継後、職員の待遇が著しく悪化したり、あまりに厳しい労働条件になることもチェックします。
例えば、給与はどうなるのか?答えは、業務内容に比べて、あまりに高額な場合は、減額になることも。
これは、承継後同じ職場で働く職員同士の格差は、あまりのひどくなると、労働意欲に影響します。
そこで1年ないし2年間は、現状を維持し、その後の勤務状況などを検討し、改定されます。
小さな事務所の場合、世間相場より安い賃金であることが多く、大きな事務所に代わって上がることも。
最近、会計事務所の事業承継の考え方やトラブルなどを書いた書物が出ています。
そこには退職金は新しい事務所で、勤務年数を引き継いで、支給するので、退職金は増加するとあります。
しかし、当支援室で仲介した案件で、退職金を引き継いだ例はありません。
なぜなら、それまでの退職金は引き渡す先生の債務ですから、その債務を引き受けるないのが普通です。
しかも承継の対価を1年分の売上としていますので、これに退職金債務も引き継具のは経営上危険です。
税理士事務所の収益はどんなに良い事務所でも、売上の30%程度が最大です。2%でも良い方です。
同時に、退職金制度を廃止した例がこのところ増えています。
この場合は、職員に対して、十分な説明が行われれるべきでしょう。
そうなると、承継の対価を回収するのに5年間かかり、その上退職金債務を負うのはできない相談です。
当然、退職金制度がある事務所は、退職金債務を支払うために資金を留保しておくべきです。
貯めていなかった先生の中には、承継の対価を手に入れ、その一部を退職金に支払いに充てます。
なかには、退職金制度をあまりに手厚くしたため、承継の対価の50%以上を充当した例もあります。
最近は中退金などの制度を利用して、毎月退職金を積み立てている事務所も多くなっています。
しかし、顧問先を見ている税理士事務所の職員には、現在の景況が分かっています。
そこで、雇用が守られること、さらに給料が現状を維持されていることで良しとする傾向もあります。
もちろん、それは経営者側の見方でしょうが、先生が何もにしなければ、事務所は自然消滅です。
仕事もなくなりますし、お客さんを引き連れて事務所を流れ歩くのも、時代に合いません。
一度流れて行った人を新た経営者はどう評価するのでしょうか?
そうですね、これまでにお付き合いした先生からは「いつかまた流れていくかもしれない」そんな声が。
事実、消滅した事務所から20年以上も前に流れてきた高齢の職員が数名、再び最近移りました。
その結果、彼らと仕事を共にしてきた税理士は廃業に追い込まれました。悲しい現実です。
事業承継支援室長
大滝二三男