事業承継の仕事をしていますと、人の死に直面することがあります。所長さんのそれが一番多いのですが、職員の方が死亡したケースで裁判沙汰になるようなこともあります。
今回の話は過労死ではないかと遺族が主張したものです。地方で6人ほどの職員が働く事務所ですが、毎年秋には社内旅行を行い、所長家族も一緒に参加し、日頃の疲れを取るとともに、懇親を深めていました。
ところが、働き盛りの50代の職員が旅行先の温泉で倒れ、救急車で病院の運ばれ手当を受けていたものの、治療の甲斐なく、家族が病院に到着する前に、この世を去ってしまいました。
楽しいはずのの社内旅行が一瞬にして修羅場になってしまいました。というのも、ご主人の死に目に会えなかった奥さんがご主人が倒れたのは毎晩遅くまで仕事をさせてきた所長の責任で、ご主人は過労が原因で倒れ、死んだんだと泣き崩れたそうです。
その職員は責任感が強く、仕事を明日に延ばすということができない方で、毎晩遅くまで仕事をしていたそうです。どちらというと仕事が好きで、家に帰るより仕事場にいた方が落ち着ける人がいますが、そんな人だったようです。
確かに、確定申告時期は仕事が終わってから申告相談にやってくる事業者も多く、そのひと月は毎晩11時、12時までも事務所の火が消えることはありませんが、通常は遅くとも9時には事務所は閉めていたそうです。
そんなことは知らぬ存ぜぬとその職員の遺族は葬式の後も過労死だと主張し、裁判を起こそうとするほどの勢いだったそうです。ところが、この所長さんは労災事故などを想定して、全職員に事務所の費用で生命保険を掛けていたことが幸いでした。
社内旅行中のことでしたから、当然この保険はおり、遺族には保険金数千万円が払われましたが、それでもご主人を失った遺族の無念さからしばらくは過労死との主張が為されたそうですが、それも時間が解決したと言います。
このケースでは保険金が相当の金額であり、しかも事務所が掛けていてくれたために死亡退職金が支給できたことでホッとされていましたが、果たして今の事務所ではこのようなケースがどれほどあるのでしょうか?
経営難に陥っている会計事務所もあると聞きますので、そのような事務所ではもちろん従業員の生命保険などは契約していない事務所がほとんどではないでしょうか。人を雇うというのは本当に大変ですね。
事業承継支援室長
大滝ふみお
でした。