会計事務所の事業承継に携わって4年を経過しましたが、明らかにお客さんが支払う顧問料に対応するサービスを何も期待していないだろうと思われる案件に遭遇することがあります。
税理士さんもお客様に帳面付けと決算・税務申告以外何も提供せず、職員が帳票などを預かって、帳面付けが終わればそれを返しに行き、税務署からの照会も職員任せ。調査があって初めて先生が登場する始末。
もちろん、いまや機械で決算から税務申告書まで作成できるので、先生は判子を押すだけ。もちろんチェックはするだろうが、果たして申告書を作成するための事前の作業をチェックしているかといえば、おそらくそれはノー。
そんな税理士はいないだろうと同業者の先生から批判をされるかもしれませんが、実はいらっしゃるのです。電子申告が普及し始めていますが、なかには老齢の先生には無断で、勤務税理士と職員とが結託して先生のIDを無断で変えてしまっていたという事例まで把握されています。
こうなると先生のお立場はまったくありません。この事務所は結果として勤務税理士と職員に乗っ取られてしまいましたが、それというのも、先生の痴呆が進んでいるのにご家族が把握できず、職員の反乱が表面でた時にはもう手遅れでした。
これと同じような事例ではありませんが、先生が老齢になり資格のないご家族が事務を担当。それも経営に関する指導などを一切することなくまじめに帳簿付け、決算・税務申告書を作成し、父親が子供たちを全面的に信頼し、判子を押す。
ところが、その先生がご自身の亡き後の対策を何もしていなかったために、先生の死で事務所は税理士さんがいない状況で、ご家族はお客様のお世話をしていたが、やはり税理士がいないと会計処理はできても税務申告書の作成や相談ができず、法律違反に。
そこで名義借り(法律的には認められないことはもちろんのこと)などの事態になるのだが、名義を貸すだけの税理士であれば残された家族との間では争いは起こらないが、その対価で「税理士がいなければ成り立たないのだから、もっとよこせ」となれば話は別。
そこにはお客様に対する視点はありません。税理士としての業務提供に関するお客さまの満足度を考えている人であれば、やはり無資格の”後継者”に対してそれなりの対応を迫るはず。ところが争いになっているところではそんなことお構いなし。
結局、お客様もこのような会計事務所には期待する少なく、年一回の決算書を安い料金で作ってもらい、税務署に少ない納税ができればいい。経営の指導などまるで期待していませんというわけ。結果、そのような事務所は消滅する運命に。
それでも、このような事務所の顧問税理士として名前を貸している人たちがいることも事実で、当事業承継支援室では、要請があればこのような法律違反を見逃さず、名義借り・貸しをやめるよう必死に対策を行っています。期待される事務所を多くするために。
事業承継支援室長
大滝ふみお
でした。