税理士さんが事業承継を思い立つ一番多いのは、気力の衰えや病気。
特にガンなどになると、早期の対策が必要になることも少なくない。
数年前、咽頭ガンにかかった先生からの相談を受けた。
初回の面談は、事業承継の概要などを説明し、
事業内容を知るために書類を提出してもらうことで、終了。
面談後、3日目には登録用紙が届き、早速2回目の面談を設定。
その際、承継予定を相談すると、「時間はあまりない」と言う。
というのも、近々、咽頭ガンの手術で声帯を切除する予定。
先生いわく、声を失ってまで仕事を続けるつもりはなく、後継者もいない。
そこで初めて、事業承継の相談に訪れた理由がはっきりした。
喉をやられてはいるが、大変話好きな先生。
病状を告白されたためか、気が楽になり、創業からの苦労話に熱も入る。
合いの手を入れる程度で、もっぱら先生の話に耳を傾けた。
所得倍増時代に創業し、バブルの時に株で大儲け、仕事も順調そのもの。
事務所を拡大し、税理士を雇ったが、持ち逃げされ、事務所を縮小。
そのため職員も辞めてもらい、今の規模でのんびりやっていた。
しかし、声がしわがれるようになり、町のクリニックで検査。
そこで、大学病院を紹介され、結果、咽頭ガンが判明。
そんな話を聞くうちに、私も何やらのどに違和感が出てきたのだ。
タバコを止めて、すでに30数年、のどに悪いことと言えば、お酒か。
そんなことが頭の隅に通り過ぎたが、悪いはずはない。
話終えた先生は次回の面談予定を決めて帰られたが、どうも喉に違和感。
早速、うがいをするとともに、鏡で喉をチェック。
赤く腫れていることもなく、何ら異常なし。
先生の病状が゛乗り移った゛のかもしれないと、気が重くなった。
こんな経験は実は度々あるのだが、本当の病気に罹ることはない。
全く不思議。人の話を聞く職業の人には、こんな経験があるのかも。
いずれにしても、健康でなければ、この商売はやってられませんね。
事業承継支援室長
大滝二三男