今や、事業承継の典型的なパターンが、個人事務所から法人の支店化。
税理士法が平成14年に改正され、税理士法人が誕生した。
これにより、税理士法人が支店展開することが可能になった。
この制度自体、個人事務所であった税理士の事業承継をスムーズにするためのもの。
当時の主税局長であったO氏が、この法律改正に尽力し、税理士業界を変えた。
つまり、個人事務所の後継者のいない先生は、社員税理士となり、自らの歴史・風土を継承。
お客さんにとっても、面倒を見てもらっていた税理士がそのままいる中で、事務所は法人化。
まさにゴーイングコンサーンができる事務所との付き合いが、できるようになったことで一安心。
税理士が亡くなったら、だれに頼もうかといった、余計な心配はしなくてよくなったわけだ。
その上、自社の担当職員も新たな法人の一員として残っているのが、心強い。
良いことだらけだが、新たな法人の中で仕事ができなくなる職員も出てくることもある。
というのも、個人事務所時代と法人では、職員の業務レベルが違うことも出てくる。
個人事務所では認められていたことでも、法人ではそれ以上の業務レベルが要求される。
そんな事態も時には起きてくる。それをクリアしなければ、職員として生き残れない。
個人事務所の時は先生がのんびり構えていたが、法人ではそうはいかない。
しかし、法人側でもそんなに急激にレベルを挙げろとは、当然要求しない。
一つには、従来通りの業務内容でいいという契約を交わしているのが普通だからだ。
経営環境もかなり変わってきた税理士業界の中で、職員の立ち位置も厳しいものになってきた。
資格ビジネスの最前線だが、資格がない職員の実務能力を、資格者は侮れない。
資格があるからといって、顧客を満足できるビジネスになるかといえば、必ずしもそうではない。
顧客の要望などを聞き逃すことなく、満足させることができるのは、資格は関係ない。
資格がない人の方が、企業経営者の思いを受け止めているケースも少なくない。
個人事務所から法人経営に、職員も能力を十分発揮できる環境が生まれつつある。
経営能力のある職員がメインを張る法人も、そろそろ出てくるような気もするが、いかに?
事業承継支援室長
大滝二三男