譲り渡す先生の使用している会計ソフトには、お客さんのデータは満杯!
中には、過去のデータにはロックがかかり、簡単に取り出せないものもある。
このようなデータを取り出すには、引き継いだ事務所が業者と契約する必要が出る。
税理士法人の場合では、本支店のシステムを統一する際に、この問題が出てくる。
引き継いだ顧客の税務調査で、これらのデータが必要となった時、データなしでは反論もできない。
そこで、大金を払って、業者と新たな契約を結べるなら問題がない。
データを取り出すためだけに新たな契約をするのは、コストパフォーマンスが悪すぎる。
過去5年の決算書と申告書の写しがあれば、後は顧問先から資料を取り寄せる。
その結果、引継ぎ後に新たなデータを入力するだけで済ます例もある。
こう見ると、継続使用できる同一の会計ソフトを使っている事務所に引き継ぐのが賢明となる。
しかし、なかなか同じソフト同士が、運よく結ばれるケースは50%あるかどうか。
今、譲り渡す側の事務所は、ほとんどがITの専門家など必要ないソフトを使用している。
つまり、業者の”都合のいい”機種を使わされている例が、ほとんど。
メンテナンス料を含めると、会計ソフト・システム維持費だけで、売り上げの10%を超える例も。
引き受け側では、経営に熱心なだけに、コストパフォーマンスを重視する。
そこで、安くていいものを使うことを徹底し、サーバーも必要ないシステムを導入。
もちろん、クラウドも早速導入し、なかには職員の専用デスクがない事務所もある。
パソコンさえあれば、どこでも仕事ができるので、一人専用デスク制は廃止。
顧問先に行くことも多いので、デスクも人数より少なくていいことになる。
こんなシステムで仕事をしている事務所と経営統合すると、移籍する職員も大変。
朝、事務所の行ったら自分の席がないと、文句を言う職員も出てきそう。
従来型の事務所の戻りたくても、それはできない相談。
でも、クラウド型になったとしても、このデータ移行問題は、業者も頑固に守るだろう。
譲り渡す先生が「○○○を使用しています」と答えた瞬間に、引き受け手の先生は顔をしかめる。
そんな姿を何度となく見てきたが、果たしてデータ移行は簡単になるのだろうか。
事業承継支援室長
大滝二三男
10月20,21日、東京・大阪で税理士事務所の事業承継セミナーを開催します。無料です。