事業承継の話が進む中で、譲り手の税理士さんが必ずと言っていいほど、尋ねます。
もちろん、弊社に話が来る前に所長税理士として、職員にそれとなく話をしている先生もいます。
中には職員の薦めで支援室に相談される先生もいます。
その一方で、奥さんはじめご家族に一切話をされずに、一人で悩んでいる先生も。
しかし、ご自身で腹を決めていないケースで相談された先生は、その時点では誰にも話をしていません。
ですから、支援室担当者から話を聴き、事業承継を進めると判断された先生からは、必ずこの質問が出ます。
その答えは、事業承継の相手との話がついてから、職員に話をするのが一番です。
というのも、交渉中に職員に話をすると、多くの場合、職員が反対します。
なかには、事務所内で力を持った職員が先頭に立って反対を表明し、先生も説得できないことも出てきます。
こうなると、辞める時期に来ていると判断された先生も、辞めるに辞められないことになってしまいます。
ですから、事業承継契約が完了した時点で、話をするのが一番問題が起こりません。
先生が辞めると決め、税理士事務所を他の税理士に引き継ぐことを決めれば、職員も反対できません。
言葉はきつくなりますが、辞めたい職員はその時点で辞めていきますから、あとのしこりは残りません。
一般企業のM&Aの場合、経営者同士で話を進め、交渉中には職員には一切話をしません。
話が漏れて取引先などに迷惑をかけるようなことがあっていけませんので、あくまでも秘密です。
税理士事務所の場合でも、顧問先に職員から話が漏れれば、顧問契約を解除されることにもなります。
そんな事態を招かないようにするためにも、そして職員の雇用を守るためにも、最終段階まで秘密です。
先生が事業承継契約を完了したと言えば、職員も不満を言うでしょうが、その判断を支持します。
そして雇用を守るとの契約ができていることを説明すれば、安心もするでしょう。
というわけで、事業承継契約完了後に職員に話をするというのが、通例となっています。
ただし、奥さんやご家族には弊社とのアドバイザリー契約時点で話をされるようお願いしています。
何しろご家族の反対は強力ですから!
事業承継支援室長
大滝二三男