職員を3人抱えていた高齢の先生が引退するというので、ある税理士法人を紹介した。
老先生、ご自身も税法の改正には毎年研修を受けるなどして、間違いがないように対応してきた。
当然職員にも改正税法を勉強するように指導。
顧問先へのサービスも怠りなく、盆暮れにはそれなりの贈答品をもって挨拶回り。
大切な顧問先には、先生も毎月職員とともに月次決算を説明に行っていた。
そんな事務所を引き継いだ法人だが、その代表の第一声が「これは大変だ!」
何が大変かと聞くと、昔の税理士報酬規程を、そのまま採用し続けているとのこと。
自社が決めている報酬よりも、高く設定されているというのだ。
弊社としては、「安い報酬の顧問先より、いいでしょう?」と考えたのだが、
その顧問料を維持するには、現在よりもサービスを良くしなければならない。
さもないと、安い顧問料を謳っている事務所に持っていかれてしますというのだ。
しかも、自社で提供できるサービスは、引き渡す先生とそう変わらない。
同時に引継ぎに際して、値下げ要請も多く出るであろうと危惧。
数年後には、引継ぎの対価に見合う顧問料収入があがらなくなるというのだ。
値下げとサービスの向上、これをクリアするのは大変だというのが、第一声の意味。
あれから3年が経過したが、実のところ顧問先は減らず、数社を除き顧問料も減額せず。
実のところは、引き受け手の法人代表の杞憂で終わり、めでたしめでたし。
この経験から、顧問料が高い事務所の承継の場合には、事前にその事実をしっかり報告。
引き受け手の心の準備をしてもらうようにしているのも、経験から出た”心遣い”です。
事業承継支援室長
大滝二三男