高齢の先生の事務所では、先生にいつ何時、万が一のことが起きるのだろうか、と職員も不安。
ある日突然、先生から「事務所を閉めるので、自分で移る先を探してくれ!」と、こんな”宣言”も。
最後まで面倒見てもらおうと思っていた中高年の職員も、お先真っ暗に。
税理士事務所の給与は中小企業と変わらず、決して高いものではありません。
これは税理士試験合格を目指す、一時的な”腰掛”として、雇用するという伝統の現れ。
試験に受かった人はそれなりの報酬を得て経験を積み、その後は独立していくことができた。
ところが、現状では、若いうちに試験に合格できない職員は、その後も安い賃金でじっと我慢。
試験には受からず、職場もなくなっては、税理士事務所にしか勤めたことのない人には、職がない。
それだけに、先生がうまい具合に事業承継をして、雇用も守れるなら、こんないいことはない。
先生も年々お客が減ってくると、職員を減らすことで、事務所を回してきた”伝統”がある。
仕事が亡くなれば、事務所には居場所がなくなるから、転職するしかないのも、当然か。
しかし、自分が担当していうお客さんたちとは、十分意思の疎通ができていると考える職員も。
そんな職員があまりにも冷たい経営者の対応に、お客とともに事務所を替えるという動きをする。
いわゆる「お客を持っていく!」という行為だが、果たして、これを証明することができるだろうか。
当然、就職する際に「お客を持っていかない」と誓約書にサインをしているはず。
それでも、自分の生活ができなくなることを考えたとき、果たして誰もが素直に辞めて行くだろうか。
生活の足しになるのであれば、受け入れる税理士がそんな条件を言うのかもしれない。
これまた証明が難しい。
それよりなにより、事業承継によって、職員もそのまま承継先に移ってもらう方が、誰にも損はない。
お客さんも担当者が変わらなければ、事務所の名前が変わっても、どうでもいいと考える人も多い。
確かに営業活動を行ったのは先生かもしれないが、やはり日々の仕事をしている方が強い。
先生が見事にバトンタッチすることで、長年働いてきた職員たちの不安も一掃され、感謝の言葉が。
もちろん、先生が変わることで、様々なトラブルも出ようが、それは必ず解決の道はあるはず。
事務所が分解されるより、そして人間不信が広がらないためにも、承継策は重要でしょう。
事業承継支援室長
大滝二三男