事業承継をするということは、経営サイドから脱出することです。
「そんなことは当然わかっているよ」と言われますが、果たしてどうでしょう。
さらに、所長一族の皆さんも認識されているでしょうか?
昨日までは所長だった先生が、経営権のない税理士になりますから、心穏やかではありません。
事業からすべて身を引いてしまう場合は、メリハリがつきます。
とはいうものの、事業承継では引き継ぎ業務が残りますから、身を引くにも時間がかかります。
その間で、様々な出来事が起こりますが、経営の最終決断をするのは、引き受けた先生(法人)。
長い年月、自ら一人で何もかも決断してきたことから、傍観せざるを得なくなりますから、複雑です。
傍観とは少し言いすぎですが、決定権者は引き受け手ですから、先生は意見を述べるのみです。
やはり、自分が作り上げた事務所が人手に渡った時には、寂しくもあり、複雑な心境でしょう。
そんな時、経営権を手放したことを忘れて、今までのようにオーナー気分になっていることがあります。
引き受け手の先生も当面はそんなことがあっても、きつく当たることはないでしょう。
当たるとすると、承継された事務所の職員にそれとなく、不満を述べる程度だと思います。
しかし、それが半年、一年と続くとなると、そろそろ我慢も限界ということになります。
譲り渡した先生も一歩も二歩も引き下がって対応しているつもりでも、引き受け手はそうは思いません。
ここが難しいところ。さらに、”家業”である事務所を手放したはずのご家族も、そう簡単ではありません。
しかも、先生の事務所を賃貸し、法人の支店として借り上げ、家族従業員も雇用となるとなおさらです。
それまでは、所長の家族として優遇されていた専従者などが、実は”荒海”に出ていくことになります。
他人の飯を食ったことのない家族従業員ですから、これまでと同様に働けばいいと思ってします。
そこに”甘えの構造”が入り込む余地が残されていれば、問題が起こります。
経営権を持った引き受け手の仕事がやりにくくなるようでは、折角の事業承継も上手くいきません。
ですから、オーナーとしての先生が事業を他人に預けた時点で、家族もオーナー気分から”卒業”です。
時間はかかると思いますが、そこは割り切るしかありません。
いらぬ葛藤を続けるより気分を楽にして、事務所の経営は忘れるように。
引き受け手からの切なる要望です。
たぶん、譲り渡す先生にはっきりと言う引き受け手はいないでしょう。
引き受け手の先生(法人)の言いにくいことを、このブログで書いておきます。
気分を悪くしないでくださいね。
事業承継支援室長
大滝二三男