仕事を辞めるとボケるから、自分で処理できるだけの仕事は残しておく。
そう言われる高齢の税理士さんも数多い。
自宅の近くにある税理士事務所でも、数年前から所長に挨拶して知らん顔。
ほかの方にお聞きすると、「あなたもそうですか、少しボケてきたみたいですね」
今年に入ってから姿を見ることがないのだが、窓越しに見える数名の職員は忙しそう。
この事務所も所長の判がない申告書を提出しているのだろうか、それとも、、、
実際に今年の確定申告にも一切目を通すこともできず、すべて職員任せ。
そんな事務所の相談が舞い込み、本日職員に面談することに。
所長の家族は税理士法人に承継を依頼したいとの希望があるが、職員はほかの考え。
というのも、同じ町の税理士に自らも移籍し、業務を続けたいという。
まるで、お客さんは自分のもののようなことを言っている始末。
これも半年以上先生がボケて、仕事ができなくなってしまったため。
その兆候はこの一年あったようだが、今も自分のことは自分でできる状態。
しかし、昨年暮れから仕事に関しては一切関心を示さず、文章も一切読めなくなてしまった。
家族も承継者探しをしたが、いい人が見つからず、弊社に正式に話がきたのが、2月末。
それも事務所の状況を把握しなければならないので、資料を要求すると、職員が躊躇。
何を思ったか、確定申告で忙しいので、時間が欲しいとのこと。
つまり、先生の指導、管理が行われていない中で、資格のない職員が”堂々と”申告書を作成。
まさにニセ税理士行為を行っているわけ。知っているのは所長の家族のみ。
また、先生が不治の病で、仕事を続けることができないために承継者を探すというのは一般的。
しかし、今回のようにはっきりボケてしまってから、承継者探しを依頼されたケースは初めて。
事務所の内容を聞くにもすべて職員任せで、その職員が”いい顔を”しなければすべてがストップ。
職員の反対があれば、解決策を探すのは難しいケース。
そういえば、昨年のゴールデンウイーク明けに、先生死亡の2か月後に承継者探しの依頼があった。
この時は女性職員が一人しかおらず、先生の死亡後も、その人がすべての業務を行っていた。
この職員、ニセ税理士になってしまうから、早急に承継する税理士を探してほしいと遺族に要求。
しかし、遺族も先生の急逝に気が動転し、あっと言う間にに2か月が経ってしまった。
あまりに時間がかかるので、その女性職員は自ら税理士を探し、話をまとめてしまう勢いに。
慌てた遺族が動き出したが、時すでに遅く、職員がお客さんをまとめて、遺族の言うことを一切聞かず。
すべての顧客が職員側に立ち、中には他の税理士に依頼するお客さんもあり、遺族は”完敗”
今回のケースはここまでには至らないと考えられるが、話をしてみないことにははっきりしません。
後継者にいない先生は、どうかボケる前に承継話は、しっかり家族でもしておいてください。
そうしないと、最後の”退職金”は手にできず、ご家族も”大損”しますよ。
事業承継支援室長
大滝二三男