数年前ベストセラーとなった『借りたカネは返すな』の著者の一人が”脱税指南”の容疑で逮捕された。この御仁、「敗者復活型の社会」(同社HPより)を目指す企業の代表取締役になり、悩める多くの中小零細企業経営者の“復活”を手助けしてきたと言われるが、、
その著書のほぼ全内容は、彼がそれ以前師事していたN氏の主張を借りてきただけのものであることは、N氏の著作を読んだことがある人、そしてN氏を知る人ならば誰もが知っていること。ただし、その著作がベストセラーにならなかっただけに、『借りたカネは返すな』が目立った。
しかも、その御仁、N氏からお客様の資産を勝手に売却したとかで破門されてから、しばらく音沙汰なしであったのが、突然のベストセラー共著者に名を連ね、見事”時代の寵児”として復活。彼の過去を知る人間は「あれあれ!!」と悪さをしないかと慮っていた次第。
『カネを返すな』の成功によって、事業再生の旗手のように言われ、たしかに業界からもセミナー講師に、そして現実に税理士さんと組んで、事業再生にもその力を発揮したようだが、何かと噂の絶えないところだった。
代表取締役である彼と同時に逮捕された元専務取締役もまた、N氏によって出入り禁止になった御仁であるが、その風貌からいかにもどっしりし、言葉遣いも良く、セミナーの司会役でもその実力は十分に発揮していたところ。
そのため、このコンビが譲渡収入を何とか少なくしたいとする依頼人もすっかり安心させ、その指導に対し、彼らの指示通りにしていたのだろう。それにしても税理士さんは何をしていたのだろうか。たぶん顧問税理士はいなかったと思うのがだ。
事業再生に絡むカネの問題で、コンサルタントがその資産に目をつけ売却して自分たちの手数料収入を手にするといったこともよく聴かれたことだが、その上脱税指南をしていたとはまさにあきれてものも言えない。
そもそも『借りたカネは返すな』といったタイトルをつけた出版社自体にも「売れれば、何をやっても良いのだ」的な発想が在りはしないか。「借りたカネは利息をつけてしっかり払う」と子供の頃にも教えられた筈だが。それだけにインパクト強かったのかもしれない。
彼らのようなコンサルタントがいること自体は不思議ではないが、やはりそのバックグランドをしっかり把握し、それなりのコンサルタントに依頼する姿勢が大事ではないだろうか。一時の気の迷いでうまい話に乗ってはいけない、そう教えてくれたのではないだろうか。
事業承継支援室長
大滝ふみお
でした。