所長先生が営業に意欲を失ったとき、事務所の勢いは当面は現状維持しますが、その後右肩下がりになっていくのは必定です。しかも、今の経済状況では、現状維持どころではなくなっています。
それだけに顧問先を紹介する企業に対する会計事務所の期待は高まっていますが、果たして紹介される顧問先は会計事務所にとってそれなりの顧問料を期待できる企業かどうかはかなり疑問です。
『ろくな顧問先を紹介してもらえないよ。紹介される企業数が増えると手数料も大幅に増えるからね』というわけだ。ある一定の紹介数を超えると手数料は年間顧問料の6割を超えることもあるという。
起業される企業数もこのところ激減しているので、右肩上がりの時代と比較するとほとんど新規顧客を獲得できないという事務所も少なくない。都会地でもこのような傾向にあるのに地方ではその比ではない。
その結果、地方で細々と経営されていた税理士事務所、公共事業などがほとんどだった土木建設業をメイン顧客としてきた地方の事務所も同様にその将来を見ることができなくなり、年を追うごとに廃業が増えているわけだ。
そのため、若手税理士も地元に戻ることなく、都会地の会計事務所に勤務する道を選び、独立することを願いながらも、夢を夢のままに悶々とした日々を送る若者も少なくない。
『独立しようという税理士も少なくなったね』と中堅事務所の経営者は嘆く。なぜか、税理士資格取得者が増えると、給料が高くなり、結果収益構造が悪くなるからだ。企業として成長できる体質改善を行うことができる事務所ならいいのだが、、
経済が成長しているときには、営業力がなくても、独立する税理士も多く、高い給料を払わなくても、それなりに働いてくれたが、独立できない今の時代は勤務税理士にはやはり高給を支払わざるを得ないだけに、経営は大変だ。
その解決策はといえば、通常の企業が行っている経営管理をしっかりし、高収益体質を築くしかないのだが、会計事務所の経営はいかにあるべきかを仲間で語り合わない税理士の特性をかなぐり捨てるのが一番か?
それとも”家業”として、飯を食う糧と考え、家族以外の他人を雇用することなく、細々と事業を続けることで、営業することなく、事業展開ができる特性を生かすしかないのかもしれない。
そこには10数年後には巨大税理士法人の存在が見え隠れしているような気がしてならない。同時に訳の分からない会計事務所経営コンサルタント、顧問先紹介業者が跋扈する時代がやってきそうな気もするが、どうなるのだろうか?
事業承継支援室長
大滝二三男
でした。