いつも、事務所から顧問先に伺うと、社長さんから「先生、いつもご苦労様です」と声がかかる。
社長にとっては、税理士という資格は、どうでもいいこと。会社の経理を見てくれれば、それでいい。
税理士事務所の職員が専門的なことはすべて処理してくれるので、その担当者はすべて”先生”。
「先生」と言われたからと言って、自分も資格のある税理士と思い込んではいけません。
あくまでも、顧問先は仕事上”先生”と言っているのにすぎません。
でも、そこを誤解して、自分も偉くなってしまう職員もいます。
先生と呼ばれている以上、「自分で税理士業務もできるのだ!」と、思い込んでしまうこともあります。
通っていた飲み屋の主人が「うちの先生から、ゴルフや飲み屋の領収書を持ち込まれたんです」という。
何の話かよく聞いてみると、”先生”が領収書を持ってきて、「払ってほしい」というのだ。
顧問料以外に、そんな経費を払う約束はした覚えがないが、売り上げもいいのでつい払ってしまった。
ところが、その”先生”、実は税理士事務所の職員で、資格はないし、その飲み屋もアルバイト先。
そのアルバイト先の申告書にサイン(判子をしていた)のは、馴染みの元税務署長。
言ってみれば、その元税務署長をバックに、ニセ税理士として”暗躍”していたのが、”先生”だった。
顧問先は税理士事務所から派遣される職員を、みな同じ”先生”と見る。
その”先生”という呼称に、資格なき職員もついついいい気になって、自らを”先生”と勘違いしてしまう。
資格ビジネスの性だろうが、職員はくれぐれも勘違いしないように、身を処したいものだ。
事業承継支援室長
大滝二三男